GUIN SAGA - グイン・サーガ

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インタビュー

[第4回] 植松伸夫 / 音楽

植松伸夫(音楽)

//プロフィール
「ファイナルファンタジー」 「ロストオデッセイ」 「ブルー・ドラゴン」など数多くのゲームミュージックを手がる日本を代表する音楽家。
今回、初のアニメーション劇伴音楽を担当。

-『グイン・サーガ』では生のオーケストラが起用されていると聞きました。なぜ生の音を用いようとお考えになったのでしょうか?

植松
作品メインテーマや、グイン、イシュトヴァーン、リンダとレムスなど主要人物に生オケの曲を付けていこうと思っているんですよ。 オーケストラの生録音はとてもやわらかい。楽器と楽器の間に空間が見えてきて、非常にリッチな作品になると思っています。

-植松伸夫さんの今までお作りになった曲を聴いていると、壮大なイメージがあります。
『グイン・サーガ』はどのように曲作りをしようとお考えになりましたか?

植松
メインテーマであるグインの曲で意識したのは、強さと悲壮感ですね。彼を取り巻く運命はある種の悲劇なんだけど、勇ましく先へ先へ向かっていく感じにしました。それに、こういう活劇作品では戦闘シーンに、ちょっと印象的な曲を作りたい、と思いますね。僕は『巨人の星』というアニメの劇伴が良いと思っていて、それは、どれを聞いてもシーンを邪魔していない。難しい和音は入っていないし、ぶつかっている音もない。音数も少ない。星飛雄馬が投げるときの音楽なんて、ドキドキさせるだけの役割でしかない。今、そんな裏方に徹するというのをやらなきゃいけないんだろうな、と思いますね。音楽は絶対、シンプルがいいんですよ。難しい音楽、誰もやったことのない音楽を出すのは……それはエゴです。我欲から複雑な和音をどうだ!と聴かせるのは、そろそろやめないとなあ、と思っているんです(笑)。最近そう感じます。『グイン・サーガ』は、難しいことをついやってしまう自分との戦いですよ。

-植松さんが曲を思い付くときは、どんなときですか?

植松
テレビを見ているときなど「これだ!」とインスピレーションを受けるときがありますね。音楽だけではなくて、例えばドラマのセリフを聴いたときに、キャラクターの心情がフッと結びつく。そのとき心が動くじゃないですか。そのときが仕事のいいタイミングなんですよ。何にも心が動いていない状況で作ると、全部、同じような曲にしかなりません。

-『グイン・サーガ』のメインテーマを聞かせていただきました。この曲はどのようにうまれたのでしょう?

植松
ここに辿り着くまでに30曲以上のメロディーを書きました。今回最終的にテーマになるメロディはバス停に向かって歩いているときに、ぼんやりと閃いたんです。 僕はよく思うんですけど、完成形ってたぶん頭上のここら辺(斜め上あたり)に浮かんでいるんですよ。時空を越えた誰かが作っていて、作曲家はそれが何なのかを探す感じです。『グイン・サーガ』のテーマは「これかな? これかな? 違うなぁ」と探して作って、30曲です。おそらく天才と呼ばれる人たちは、ぼんやり曇っていないんですよ。宙に浮いている曲が明確に見えているんでしょうね。

-グインの曲では見えましたか?

植松
シンプルな曲だけど、意外とよく見えたと思います。

-今日はありがとうございました。

(取材・構成 柿崎俊道)